※好きしょ 高校生 空×直 全体的に裏風味。
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4:言葉にするぐらいなら目で語れ。
想いが通じる前も、通じた後も同じ部屋っていうのは何かと便利で、かつ不便なものだなぁと感じる今日この頃。
オレ自身はというとかなり便利が優先するけど、藤守からするとかなり不便らしい。
まぁオレたちのことを抜きにしても、夜とらんのこともあるしなぁ......。
「きょ、今日は、こっち来ないでよね！」
風呂から戻って来るなり威嚇充分。顔が真っ赤なのは、口にしたくもないことを言わなきゃいけないからだな。
「何にも言ってねーだろぉ？」
「......顔に書いてある！ 夜に対抗する気だろっ。そんなことに俺を巻き込まないでよね」
巻き込むなって言っても、オレのお相手っていったら藤守しかいねーし？
「だってよー、夜のヤツがー」
「知らないっ。聞かない！ 俺には関係ないからねっ」
そう言いきるとガバッと布団を被って、オレの言葉を完全シャットアウトした。
へーそう来ますか。
「んじゃー、らんにでも頼むか～？」
「な......っ」
布団を蹴飛ばして飛び起きた藤守は目を丸くしてる。
「藤守がイヤだっていうんだもん。らんに頼むしかねーだろ？」
「ら、らんがうんって言うはずが......、え？ ちょ、ちょっとらんっ、何言って......」
どうやら表面上らんは、珍しくオレに味方らしい。まぁ夜が色々根回ししていたんだろうけど。
最大の味方に裏切られ、見事に茫然自失となった藤守を抱き上げると、そそくさとオレのベッドへ移動させた。
すとんと降ろすと、動揺が残りつつも鋭い視線でオレを睨んできた。
「来るなって言っただろ」
「だから、連れてきたんだけど？」
そんなの屁理屈だ。とか呟いて、状況打破のため躍起になってる。
逃げ場はないし、オレが逃がすつもりもないって感づいてるから、身の安全のためにすげー必死。
抱き締めようとしたら、オレに向かってつっかえ棒にした腕に邪魔された。
「絶対、やだーーっ」
「まだ、何にも言ってないじゃん。あ、でもオレのとこだから、藤守は全然気にしなくていーよ？」
「な......っ」
汚れても、汚しても全然構わないってマジで言ったら、呆気にとられた顔。
さすがにオレの本気を感じ取って、じりじり後退し始めた。
と言っても狭いシングルベッドの上だし、逃げ場所なんて限られてる。
壁際に追いつめたら、最後の抵抗とばかりきつく睨んできた。
「俺、やだからね。今日はもう寝るんだから」
「......寝ても良いよ。でもここで、な？」
言葉の裏の真意を込めて言う。
寝てもいい。但し、服なんか着て眠らせる気は毛頭ないから......。
珍しく相当強気なオレに、藤守は動揺が隠せなくなってきたらしい。
表情から弱気が顔を出し始めた。
「は、羽柴......、何か今日おかしいよ......」
うん、自覚はある。
夜に挑発されての、怒りが起動力。
少しはあったりする抑制力を、自ら放棄してるだけなのかもしれない。
『本気で抱いてるなら、嫌がられるはずないじゃん』
んな風に揶揄した夜の言葉も、態度も。
藤守も覚えてるだろうから。
強引で悪いけど、藤守にも夜にも、ついでにらんにもオレの本気ってやつ分かってもらうつもり。
本心を乗せて、藤守をただジっと見つめた。
睨んでた藤守の声も、勢いがどんどん弱くなっていく。
「ちょっ、だ、だから......」
追いつめられてる内心が手に取るように分かるんだけど、そんな内面も可愛いとしか思えない。
ホント、可愛いなぁ、藤守は。
「諦めてなんて言う気ないから。折角だし、一緒に気持ちよくなって......って、うわっ」
もう一歩で陥落かと踏んで、だめ押しする気で言ったら、その辺にあった枕で思いっきり頭を叩かれた。
一発で、オレは呆気なく撃沈。
ベッドに沈み込んだオレを見下ろす藤守の目には怒りが滲んでる。
押し切られそうになってたのに、なんで？ そんな視線で沈み込んだベッドから見上げる。
「そう言うこと、わざわざ口にする無神経さが許せないっ」
「じゃあどうしろっていうんだよ......」
鈍く痛みを訴える頭をさすりながら尋ねたら、途端泡を食った顔をする。
「だ、だから、それは......」
ごもごもと口の中で呟いて、藤守は俯いた。
結局いつもの通り。このパターン。かよ
はぁ～ってため息を付いたら、藤守の肩がびくんと震えた。
まぁ今日のは行き過ぎかもしれないけど、結局はオレが言わない限り絶対コトは進まないんだぜ、オレたちの場合。
夜とらんとか、兄ちゃんと七海ちゃんとか、阿吽の呼吸だってのにさ。オレたちがそうなるのってむしろ喧嘩するときだけって、どうなんだよ。
恋愛してるって思ってるの、オレだけじゃないはずなのに、空回ってるとこあるんだよなぁ。
もちろん、Hするのが全てじゃないけどさ。
一番近くに感じられて、お互いの気持ちも伝わって、ついでに気持ちいいんだぜ？
藤守だって、本心から全部「嫌」ってわけじゃないくせに。
大体拒まれてばっかいると、気持ちまで拒まれてる気がして、マジ凹むって。
だから遠慮する部分もあってさ、言い出しずらくって、なんか欲求不満をいつも抱えてる気がしてる。
もうそろそろ、結構我慢してることも考慮してくれてもいい気がする。
......ってか、考慮してくれ！
じゃねーと、マジで襲いかねないって！
「―――......あ、あのさ、羽柴。もう、わ、分かったから......」
「へ？」
口に出して叫いていた訳じゃないのだけれど、妙に座った目をした俺の雰囲気から、色々察してくれたらしい。
「こんなことぐらいで、何でそんな黒いオーラ出せるんだよ......」
ため息混じりのつぶやきには、諦めが混じっていたような気がする。
意味が分からなくて尋ねる視線を向けると、途端そっぽを向いた。
あーもしかして、そういうことか。
照れてるのか、もしくは少しはオレの気持ちに同調する部分もあったのか。
少しだけ見えた藤守の瞳がちょっとだけ、潤んでるのが分かった。
......あれ。言葉にして聞かなくてよかった、かも。
聞こえてたら、思いっきり殴られた上にＯＫ貰えなかったんだろうな。
「あー、それじゃあ......」
「それじゃあ、とか言うなっ、バカ羽柴」
取りあえず逃がさないように抱き締めながら呟いたら、やっぱり言葉は駄目だというように殴られたのだった。
～終～
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＜メモ＞
お題のSSは、前後の経緯を割と省いて雰囲気で書いています。
これもそうで、夜が何を言ったかとかは、適宜補完して読んでいただけると助かります。
実は書き始めは割と前(4～5年前かな？)で、完成させたのは今日ですw
最初の方の台詞だけ思い浮かんで、それ以上はまとめきれなかったんですよね。
さて、この内容。
禁つける程の内容では全くないんですが、いいのか、これ。な気分。
強気で頑張ろうとする空さんと諦念が随所に入ってる直さんで。
うちの二人らしいっちゃ、らしいの......か？
一応、「了」はつけますが、最近の物なので、後々修正入るかもです。
2011/10/28 了
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